27日、台湾野党の民進党代表選挙で元主席の蘇貞昌候補が過半数を得て当選した。
今年の総統選挙での敗北によって蔡英文主席が辞任したことによるものだが、総統選挙に敗れたとはいえ同時に行われた立法選挙(国会議員)で民進党は大きく議席を伸ばした。この功績は大きい。そして、元主席で首相や旧台北県知事を経験してきた蘇貞昌氏が主席に戻ったことにより、党内の気運は高まるだろう。( 蘇貞昌 – Wikipedia )
「宮崎正弘の国際ニュース.早読み」
平成24(2012)年5月28日通巻第3664号 を転載
台湾最大野党=民進党党首に蘇貞昌(元首相、元台北県知事)が復活
理知派学者女性から「肝っ玉母さん」が代理主席、そしてベテラン政治家へ
5月27日、台湾の240ヶ所の投票所でおこなわれた民進党主席選挙で、下馬評通り、蘇貞昌が過半数を獲得し、党主席に選ばれた。「一強四弱」と言われる党首選挙だった。
蘇貞昌は50.47%(163、808票)を獲得し、他の四人の候補をまったく寄せつけなかった。
二位は蘇換智(元台南県知事)で21.02%、三位は呉栄義(元副首相)で14.73%、四位は蔡同栄(前立法委員)で11.28%、最下位は許信良(元党主席)で2.49%だった。
これで三月総統選敗北の責任をとって党主席を辞任した蔡英文の後、臨時主席となったのは黄菊(高雄市市長)。蔡英文は新台北市の票を固めていたが、次の次に備えるためか、立候補を見送った。
蘇貞昌は台北大学ラグビー部出身で独立運動家らの弁護士として活躍した。近年は総統選挙への野心満々で、党をこれから如何にまとめるか政治力量が試されるが、中国問題で明確な姿勢を示しておらず、それが党内から批判の的になっている。
2014年に五大市長(台北、新台北、台中、台南、高雄)の選挙、ここで現状の3vs2を、4vs1へと逆転できれば、蘇貞昌が2016年におこなわれる総統選挙の最有力候補となる。だが、国民党の牙城である台北、新台北を民進党が奪回するには、まだまだ距離がある。
馬英九総統は5月20日、再任された総統式典で演説し、中台の「新たな協力分野」に言及した。「両岸には『民主、人権、法治』をめぐる対立が横たわり」、そのために「引き続き平和を強固にし、繁栄を拡大し、相互信頼を深める」と主張したに過ぎない。もっぱら現状維持。「統一せず、独立せず、武力行使せず」の「三不」原則が国民党の近年の対中姿勢だ。
馬総統は、北京の用語を巧妙に援用して、中台共通の基盤は「中華民族」であり、その血縁、歴史、文化を共有する」と指摘した。加えて「『国父』とする孫文の『天下為公』と『自由、民主、均富(公平)』の理念は決して忘れてはならない」などと訴え、台湾国民の認識と大きな隔たりが歴然となっている。
国父記念館には訪れる人も少なく、毛沢東や江沢民が好んだ「中華民族」と「台湾人」は異なるという認識が、近年の台湾の世論調査から伺える。
馬総統は蘇貞昌に祝意を送り、両者会談を提案したが、蘇は返事を保留した。また中国は、こんかいの野党のトップを選ぶ政党内選挙に対して殆ど関心を示さなかった。
▼時事ドットコム
民進党主席に蘇貞昌氏=次期総統選に意欲-台湾
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