くまにちコム  2011年03月10日 を転載

水俣病と認定されたのに、関西訴訟での勝訴を理由に補償を拒まれるのは不当として、関西在住の男性(75)が原因企業チッソに補償協定に基づく一時金1600万円の支払いなどを求めた訴訟の控訴審第2回口頭弁論が10日、大阪高裁であった。

三浦潤裁判長は男性側の証人申請などを認めずに審理を打ち切り、一審判決から5カ月余りで結審した。判決は5月31日。

男性側が申請していたのは、裁判で解釈論が争点となっている補償協定を、患者側とチッソ側が1973年に締結する際に立ち会った馬場昇元衆院議員(85)=熊本市=の証人尋問。

この日の弁論で男性側が、馬場氏の証人申請について「協定を正しく解釈し、争点を解明するために不可欠な証人」と主張したのに対し、チッソ側は「協定の当事者が立会人に、協定を解釈する権限を与えた事実はない」と反論。三浦裁判長は「証人を調べる必要性はない」として、申請を認めなかった。

同訴訟は2009年7月提訴。「補償協定と損害賠償は別の範ちゅう」とする男性側が水俣病認定に伴う同協定の適用を求めたのに対し、同協定を損害賠償にかかわる和解契約ととらえるチッソ側は「損害賠償は関西訴訟で決着済み」と主張。10年9月の一審大阪地裁判決は同社側の主張を全面的に採用し、男性の請求を棄却した。

男性の代理人、田中泰雄弁護士は弁論後、「馬場氏の肉声を通して、協定締結に至った経緯を裁判所に理解してほしかった」と話した。(石貫謹也)