「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成22年(2010)10月14日(木曜日)通巻3098号 を転載
尖閣衝突以後、在日中国語メディアは多少、論調が変化したか?
反中国のデモ、保守の集会を大きく取り上げ、在日華人へ警戒を呼びかける
日本における中国語メディアは五十以上。週刊、半月刊、月刊ならび雑誌を含め、このうちの十二種は池袋で発行されている。
尖閣諸島での日中衝突事件以後、なにか論調に変化があるのか?
第一にこれまで無視するか、罵詈雑言をならべて非難してきた保守派、とくに中国に批判的な保守系市民団体の動きに注目するようになった。
『日本新華僑報』(10月8日付け)には渋谷で行われた反中国街頭デモと集会を大きく取り上げ、『右翼反華集会 無益中日関係』という記事がある。
「右翼」と表現する認識不足はおくにしても、この集会には台湾支援の団体や、『妄言』を吐いて馘首された田母神前空幕長が代表をつとめる「がんばれ日本、行動委員会」、『李登輝友の会』が主体で、集まったのはせいぜい800名と海外メディアは報じたが、主催者は二千人以上だと宣伝した等と先入観と悪意をもって書いている。
ただし中国批判ばかりか『彼らは菅直人首相の弱腰外交を批判し、同時に竹島、北方領土問題を結びつけて、中国が尖閣を将来的に陵奪するだろうと演説していること』、海外メディアの取材が目立ったのに日本のマスコミの取材陣が見あたらなかったことなどに注目している。
また京都、嵐山の周恩来の記念碑が破損され、福岡と長崎の中国領事館に発煙筒が投げ込まれ、神戸の中国人学校の倉庫が破損され、さらに福岡市で中国人団体の観光バスが右翼の宣伝カーに取り囲まれた事件などを克明に列挙して、在日華僑ならび華人は安全に注意せよなどと呼びかける紙面を作った。
日本の修学旅行で中国を目的とした団体旅行が陸続とキャンセルされ、日本航空が千名の予約キャンセルに見舞われたと報道する一方で、日本のデパートは中国からの観光客が「救世主」ではないか、とも並立して書いている。
『網博週報』(10月8日付け)は同じく反中国デモを報道しつつも「反華デモは全国十八カ所で組織されたこと。集会では中国が尖閣から沖縄の制空権を狙い、民主党の弱腰な大衆政策を批判したことなども伝えている。
そして同誌は言う。「尖閣の衝突で日中関係に変数が伴う」(釣魚島撞船事件為中日関係帯来的変数)(10月8日付け一面トップ)。