鍛冶俊樹の軍事ジャーナル  第61号(5月22日) を転載

戦闘機F35導入は失敗か?

 政府はF35戦闘機の導入を決めたが、問題が続出して先行きが危ぶまれている。チャンネル桜でこれについて話した。

昨年12月に1機99億円(本体価格89億円)で2016年度導入を決定したが、今年になって主開発国の米国で機体の不具合の改修で納期が2年遅れることが判明、さらに価格も190億円になりそうだとの情報も飛び込んできた。現在、交渉中であるが納期が遅れることは確実で、不具合の改修は開発費として計上される共同開発方式であるから価格の上昇は避けられない。

田中防衛相は、どうしても折り合いがつかない場合は、決定を白紙に戻す場合もあり得るとしており、次期戦闘機導入の先行きは混沌としてきた。

日本は今まで戦闘機導入に当たっては主にライセンス生産方式を取って来た。米国で完成された機体の設計図を米国にライセンス料を払って取得して、日本の企業が生産するのである。この方式なら納期や価格にそれほどのブレが生じない。また日本企業に生産技術が蓄積されるので、いずれは自主開発の道も開ける。

日本は現在最強の米国戦闘機F22ラプターをライセンス生産方式で導入するつもりでいた。かつて最強であったF15イーグルもこれで導入したから、今回も当然その方式でいけると決め込んでいたが、米国が突然拒否した。
理由は明言しないが、明らかに集団的自衛権を行使しようとしない日本政府への不満がある。F22は高度な連携が可能となるインターネット型戦闘機だが、日米共同作戦を実施しないのなら分与しても意味がない。またスパイ防止法もない日本から中国に情報技術が漏洩する可能性もある。

そこでF22の簡易型で、10カ国で共同開発するF35の導入を米国は日本に勧めた。「F22は1機180億円、それに対してF35は共同開発だから安上がりだ。」と言って勧めてくれた。当初の見積もりは1機50億円以下だった!。
だが共同開発方式の弱点が裏目に出て行き詰ってしまった訳だ。

航空自衛隊はいままで常に米国から最強の戦闘機を導入して、東アジア最強の防空体制を維持してきた。日本国民が戦後、外国の脅威をさほど感じずに過ごせたのはこの防空体制のおかげである。今まさに戦後平和の一角が崩れようとしている。


F35の試作機の試験飛行の模様は下記で見る事が出来る。
http://youtu.be/Ki86x1WKPmE
この画像が終わるとオプション画像でF22やその他の戦闘機の画像を見られる。これらを比較すると分かるが、F35は確かに優秀な戦闘機だが、やはりF22には及ばない。米国は最強の戦闘機を日本に供与する事をやめたのである。

 
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軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、論文「日本の安全保障の現在と未来」が第1回読売論壇新人賞佳作入選。現在、日経ビジネス・オンライン、日本文化チャンネル桜等、幅広く活動。
<著作>
戦争の常識 (文春新書)
エシュロンと情報戦争 (文春新書)
総図解 よくわかる第二次世界大戦―写真とイラストで歴史の流れと人物・事件が一気に読める