「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成23(2011)年10月27日通巻第3462号を転載

EU首脳会議は無能な政治家があつまって議論するだけなのか?
もたもたしていると中国はますます軍拡をすすめ、世界秩序を脅かす

会議は躍る。メッテルニヒの「ウィーン会議」の舞踏会は暇つぶし、贅沢?
これが鹿鳴館のモデルだったようだが、あれこそは欺瞞政治のヨーロッパに過渡的な平和をもたらした。
はなしあいが続行さえされていれば戦争は回避し得た。

いまEU首脳会議は侃々諤々、ギリシア問題から欧州通貨安定基金の拡充では合意したが具体策がまとまらない。
ヨーロッパはギリシア救済でどうするこうする、ああせいこうせいの会議ばかり。侃々諤々、結論はつねに先送りされ、そして危機は一層深化し、ギリシアからポルトガル、スペインへ飛び火し、いまはイタリアを襲っている。
会議は躍り続け、さて最終結論はまたまた先送りされた。

それでもユーロ擁護主義者(左翼リベラルに多いのだが)は寝言に近い綺麗事を言い続ける。
「多少のごたごたは収支バランスの問題であり、凸凹はあろうとも、ドイツは(犠牲を払ってでも)強引に急場をリードせよ、EUのユーロ安定化基金拡充と銀行への資本注入はバズーカ砲であり、ギリシアを救うことは制度上、当然であり、この制度さえ運営できれば米国憲法のようにチェック&バランスが効果を上げる。ユーロは天国への道をめざして設立されたものではなく、あくまでの地獄へ堕ちないためのシステムである」(ロジャー・コーヘン、NYタイムズのコラムニスト、同紙10月25日付け)。

だがユーロの統一通貨は分裂の可能性が日々たかまっている。欧米の経済力が衰退する象徴的な局面にわれわれは位置しているのではないか。

▲ポール・ケネディは警告する

大ベストセラー『大国の興亡』を書いた歴史家ポール・ケネディ(エール大学教授)は
「国際的な決済の85%が米ドルだった時代はとうに去った。米ドルの価値は下がり、米経済はくたびれ、中国が台頭し、決済通貨は多元化する」として次のように今後の世界を予測する。

「これからの世界経済はドル、ユーロ、人民元の三極体制に移行し英ポンド、日本円は補助通貨となる。欧州は紆余曲折がこれからもあるだろうが通貨統一の次は政治統一へとすすむ過程にあり、まごついている時間はないはずである。中国の台頭は欧州五百年の歴史を終焉させる可能性があり、国連は無力で米ロ中は自国利益にこだわってまとまりがない。アジアの軍拡とりわけ中国の主導を黙視すれば、歴史は違う角度への変革をとげるだろう。すなわち現在よりも深刻で問題だらけの世界がやってくることになる」

来週のG20カンヌで、なんらかのヴィジョンが示されない限り、世界経済はより深刻に恐慌に近づく。

 
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