6月6日台湾第二の都市高雄で市長に対するリコール(解職請求)を問う住民投票が行われ、有権者4分の1以上が必要とされる成立要件を満たし、韓国瑜(かん こくゆ、国民党所属)市長のリコールが成立した。

この日の有権者数は約230万人で、投票率は42%という低水準であったものの賛成939,090票、反対25,051票という結果となり、賛成票が成立要件である575,000票(有権者4分の1)を大きく上回った。これによって韓国瑜市長は7日以内に解職となり、3カ月以内に市長選挙が行われる。

リコール運動を進めてきた市民団体はその主たる理由として「韓市長が総統選挙に立候補し、その期間中市長職を休職したことは市政を軽視している」というものだが、過去の選挙における公約を反故にすることが多いのも韓市長の特徴で、また、近年の対中国関係において強い独自性を示し独立志向の強い蔡英文総統が高い支持を得て再選を果たした中で、中国との融和を図る韓市長に対する市民の不信任が現れた結果でもある。

そもそも高雄は民進党発祥の地であり、中国との融和を打ち出す韓氏が市長に選ばれたこと自体が珍しいことであった。この高雄で親中派の韓市長が選ばれた背景は、やはり経済的な冷え込みで蔡英文総統への支持が落ち込んだことが大きく影響していた。しかしその後香港で中国共産党の圧政に抵抗する市民活動が湧き上がり、それを見る多くの台湾人が中国への脅威を高めた。そして中国との対峙姿勢を崩さない蔡英文総統の支持率が急上昇した。

今回の開票結果について韓市長は「130万人以上の有権者が棄権する中での不公平な投票だ」というが、42%という低い投票率でありながら有権者の40%以上の票を得ている現状で、棄権したその130万人が参加した場合は賛成票が180万票を超えるという驚異的な数値になるのではないか。
3カ月以内に行われる市長選挙では民進党の圧倒的優位が予想される。

中国からの脅威に力強く対峙する台湾の政治動向を注視していきたい。

2020年6月6日 高雄市長リコール(解職請求)投票
有権者数 229万9981人
リコール要件 57万5,000
投票率42% (96万6,000)

賛成 93万9,090:反対 2万5,051
対比 (賛成)100対(反対)2.7

資料記事:


※8月15日、高雄市で市長補欠選挙が行われ、与党・民進党の陳其邁・前行政院副院長(副首相)が他の2候補に大差つけて当選した。