中国の新疆ウイグル自治区にある「職業訓練センター」といわれる施設が、宗教弾圧や臓器売買のためにイスラム教徒を収容した施設であることは既にあらゆる国々から認識されている。だが、そこから逃れてきたウイグル人の悲痛な訴えに日本社会は冷めた反応だ。また中国からの反発を恐れる国内メディアの報道は消極的で、今ある現状が日本人には伝わりにくい。海外メディアの報道が翻訳されて知るという、さみしい情報社会だが、それでもインターネットを通じて若い世代が目覚めてきたことは明らかだ。

中国・ウイグル強制収容所現地での取材が厳しく制限される中、AFPは2018年10月24日、中国政府の公開文書を基に収容施設の運営実態に迫ったベン・ドゥーリー記者の記事を北京発で配信した。以下、当ウェブサイトで同25日に掲載した抄訳にカット部分の訳を追加した全訳版を、図解とともに公開する。


以下、【AFP】2018年12月30日 16:48 発信地:北京/中国

中国・ウイグル強制収容所の内側─催涙ガス、テーザー銃、教本

 より抜粋

■楽しげに学ぶ研修生?

 研修生たちが楽しそうに標準中国語を学び、職業技能を磨き、スポーツや民族舞踊といった課外活動に熱心に取り組んでいる──。国営の中国中央テレビ(CCTV)が10月中旬に放送した映像を見ると、中国の最西部・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)にある「職業訓練センター」は、あたかも近代的な学校であるかのようだ。

 ところが、自治区南西部ホータン(Hotan)地区のある地方政府でこうした施設を管轄する部署は、今年、数度にわたって次のような物品を調達していた。警棒2768本、電気棒550本、手錠1367個、それに催涙スプレー2792缶。いずれも、教育と関係があるようにはとても思えない品目だ。

■「つながりを壊せ、出自を壊せ」

 政府文書が示すところによれば、こうした「職業訓練センター」の周囲には有刺鉄線が張り巡らされ、赤外線カメラも設置されている。内部では、催涙ガスや、テーザー銃などのスタンガン、「狼牙棒(ろうげぼう)」と呼ばれる、とげの付いたこん棒などを与えられた大勢の警備員が、「研修生」を厳しく管理している。

中国・ウイグル強制収容所3 ある文書には、自治区トップの陳全国(Chen Quanguo)共産党委員会書記の次のような発言が引用されていた。
いわく、センターは「学校のように教育し、軍隊のように管理され、刑務所のように警備され」るべきだ。より優れた中国公民を生み出すために、センターではまず、入所者の「血筋を打ち壊し、基盤を打ち壊し、つながりを打ち壊し、出自を打ち壊さ」なければならない──。


■収容所数は180カ所超

 AFPのまとめによると、新疆ウイグル自治区内にはこうした施設が少なくとも181か所存在する。
ウイグル自治区にセンターが登場するのは2014年にさかのぼる。自治区内で死者を出す暴動が起きたことを受けて、地元当局が「テロリズム」に対する「厳打」と呼ぶ厳しい取り締まりに乗り出した年だ。
ほどなくして、新疆ウイグル自治区政府は「宗教的な過激思想」の管理に関する条例を公布した。

■党中央から資金

中国・ウイグル強制収容所2 その結果、拘束者が急増し、各地方政府は大急ぎで対応に追われたようだ。
2017年には自治区全体で司法当局の支出が爆発的に増えている。AFPの試算によれば、当初予算の少なくとも577%増に相当する30億元(約480億円)近くが投じられたもようだ。予算関係の文書によれば、資金の少なくとも一部は、中国の公安部門を取り仕切る党中央政法委員会から直接支出されている。

■中国外務省「強い疑問」

 AFPは自治区の地方当局に繰り返し取材を試みたが、本記事を公開するまでにコメントを得ることはできなかった。中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官は10月24日の定例記者会見で、本記事が明らかにした事実に疑問を呈する一方、内容を特に否定もしなかった。
「中国は世界に対して、新疆の強制収容所を職業訓練センターだと信じ込ませようとしている。しかし、警棒を2768本、電気棒を550本、手錠を1367個、催涙スプレー2792缶購入する職業訓練センターとは、いったいどんな職業訓練センターなのか?」

■定期的に「自己批判」

ある地方政府の職業教育訓練サービス管理局の文書によれば、センターの入所者は標準中国語や党の主張に関する知識を週、月、「季節」単位で試験されるほか、定期的に「自己批判」を書くことになるとされている。

■各世帯から「最低1人」収容か

中国・ウイグル強制収容所4 当局者には、入所者の家族の自宅を定期的に訪れ、家族に「反過激主義」について教示し、共産党への反発に硬化しかねない怒りの兆候が彼らにみられないかかどうか、チェックすることが命じられている。
各地方政府は、元服役囚や宗教的な過激主義の罪に問われた人に加え、各世帯の少なくとも1人に対して、最低でも1〜3か月間、「職業訓練」を受けさせるよう指示されていた。

AFP BB news