■ 国際派日本人養成講座 ■2010/10/13 を転載
 
渡部昇一「歴史講座」
これだけは知っておきたい「ほんとうの昭和史」

渡部昇一氏の講演CD「これだけは知っておきたい『ほんとうの昭和史』」を聞いていて、次のような歌を思い出した。

囲炉裏(いろり)のはたに 縄なう父は
過ぎしいくさの手柄を語る
居並ぶ子供は ねむさ忘れて
耳を傾け こぶしを握る
囲炉裏火はとろとろ
外は吹雪

「冬の夜」という文部省唱歌である。

「歴史」(History)とは「物語」(Story)と同じ語源である。祖父や父が一族の物語として、子らに物語ったのが、「歴史」の原型だろう。子らはそれを「自らの物語」として受けとめ、それを自らの拠り所としていくのである。

渡部昇一氏の講演を聞いていて、この歌にあるように、「耳を傾けこぶしを握る」という思いをした。渡部氏には優れた著書が多数あるが、実際に話される内容を肉声で聞くのは、文字を読むのとまた違う味わいがある、と思った。

たとえば、尖閣諸島付近の我が国領海内で違法操業をしていた中国漁船が、停船させようとした海上保安庁の巡視船に体当たりした事件で、逮捕した中国人船長を、日本政府は中国の圧力に屈して保釈してしまった。

渡部昇一氏が物語る次のような歴史を知っていたら、国民はこれが「いつか来た道」だという事を理解するだろう。

[第1巻 「昭和日本に押し寄せる東西の暗雲」後編]

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シナはアヘン戦争以来、屈辱を舐めさせられているので、これを煽るに一番良い手はナショナリズムを興させる手ですね。そして方々で(外国人の)租界を攻撃させました。イギリスの大使館もやられましたし、アメリカもやられましたし、フランスもやられました。昭和2年頃ですね。

その時に、イギリスの船もアメリカの船も、暴れているシナ軍に対して、揚子江から艦砲射撃をやっているんですよ。ところが日本だけは、幣原内閣の絶対平和主義で絶対、大砲を撃っちゃいかん、ということで、大砲を撃たなかった。

そのためにどういうことになったかと言うと、上海公使館は徹底的に略奪され、公使夫人も丸裸にされた、ということです。そこにもちろん、多少の海軍軍人がいたわけですが、これも抵抗するな、という命令ですから、完全にみな剥ぎ取られてしまった。

そうしますとですね、この辺がシナ人なんですね。大砲を撃つ国は止めておこう、大砲を撃たない日本を集中的に襲え、ということになって、いつのまにか、それまではアメリカとかイギリスも襲ってたんですよ。ところが、その後は日本だけが襲われるようになり始めるんですね。

だから、あの国はこちらが抑制したということは、抑制と見ない。弱さとしか見ない国であると、考えるべきですね。
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こちらが善意で抑制すれば、相手も善意で応えてくれるだろう、というのは、まさに日本社会でしか通じない思い込みであり、戦前の幣原外交はそれで失敗した。今、その歴史を学ばずに、同じ失敗を繰り返したとしたら、まさに愚か者である。

こういう先人の「物語」に「耳を傾け こぶしを握る」所から、「賢者は歴史に学ぶ」のである。

渡部昇一氏は、まさに、こういう「いつか来た道」を繰り返させまいとの覚悟で、我々に物語っているのである。

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これだけは知っておきたい「ほんとうの昭和史」(全5巻セット)
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