ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、2010年のノーベル平和賞を服役中の中国民主活動家・劉暁波氏(54)に授与すると発表した。

 
「中国における人権のため、長年にわたり非暴力的闘争を行っている功績」によるもので、中国側が強く反発するのは必至だ。
 
 同委のトールビョルン・ヤーグラン委員長は記者会見で、「中国は地位に見合った責任を果たせねばならない」と、責任ある「大国」としての行動を促した。中国人の受賞は、1901年に始まった同賞の歴史で初めて。
 
 中国共産党の一党支配を批判してきた同氏への授与は、同委としての中国政府批判にほかならず、中国側の猛反発は必至。同委が本部を置くノルウェーとの外交問題に発展する可能性もある。
 
 同委は、中国政府が民主化運動を弾圧した天安門事件が起きた1989年には、チベット独立運動の指導者ダライ・ラマ14世に同賞を授与している。今回の授与は、増強する中国の国力を前に、国際社会が中国の人権侵害批判を控える傾向が出る中、「北欧の良心」と称される同委の見識を示した形だ。
 
 文学者で詩人でもある劉氏は、1989年の民主化運動に身を投じ投獄された。釈放後も運動を続け、中国共産党の一党独裁を批判し、民主化を求めた2008年の「08憲章」の起草では中心的な役割を果たした。この翌年、「社会主義制度の打倒を企てた」などとして国家政権転覆扇動罪で逮捕され、今年2月に懲役11年の判決が確定、現在、遼寧省内の刑務所で服役している。中国政府は、劉氏を「中国の法律を犯した人物」(中国外務省の姜瑜・副報道局長)と評している。
 
 授賞式は12月10日、オスロ市庁舎で開催されるが、中国政府が劉氏の出席を認める可能性は皆無に近い。賞金は1000万スウェーデン・クローナ(約1億2400万円)。

【オスロ=大内佐紀】 
(2010年10月8日18時02分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101008-OYT1T01158.htm?from=top